ふだん使っていても、手になじむもの、心地のよいもの、心がひかれるもの、そういうものがあります。触れるたびにその良さを発見し、おもわず嬉しくなってしまう、そういう道具に囲まれて暮らしたいものです。そして、自分でつくったものがそういう道具であれば、すごく素敵なことだと思いませんか? Cocoa40 は、そういうものであって欲しいという願いを込めたキーボードです。
Cocoa40 は、私が設計、開発した自作キーボードです。いわゆる 40% キーボードのカテゴリーで、 46 キーのキーボードです。数字キーの列がないキーボードですから、コンパクトですっきりとした見た目です。
このサイズのキーボードは実用的ではないと思われがちなのですが、一般的なキーボードに比べて運指の面で優れています。ホームポジションから、上と下の列にひとつだけ指を動かすだけですので、キーを打つときに大きく手を動かさずに済むのがメリットです。このサイズに慣れると、数字の列が遠く感じるようになります。
それでいて、打つのに無理があるかというと、そうではありません。左右のスペースキーを数字用のシフトキーと記号用のシフトキーに割り当てることで、数字列のキーをカバーすることができます。 40% キーボードは、親指を活用することで通常のキーボードと遜色しない打鍵をすることができます。
一方で、不満がないわけではありませんでした。私がふだん使っている Fourier というキーボードでは、よりコンパクトにするために、 ]
キーや '
キー、 /
キーが省略されています。なので、プログラミングをするときに利用頻度が高いキーが無いという状況でした。
私が Cocoa40 をつくったのは、その不満を解消するためです。左右分割キーボードの右側に 1 列だけ足すことで、記号が足りない不満を解消しています。
キーの物理配列では、一般的なキーキャップのセットが利用できるように考慮しました。キーキャップセットに含まれるキーの幅と高さは決まっています。それを考慮したうえで物理配列を決めましたので、一般的な 40% キーボード用のセットであれば、だいたいのキーキャップセットで対応できるものとおもっています。
それから、キーボードのマイクロコントローラーとして Pro Micro を採用し、ファームウェアを QMK で用意しています。これは一般的な自作キーボードキットと同様です。アンダーグローには対応していません。
組み立てにあたって、レーザーカットサービスを利用してアクリルプレートを制作しました。今回は白系のキーキャップとあわせたかったので、透明アクリルにしています。アクリルプレートで PCB をはさむサンドイッチマウントという構造です。
キーキャップは DSA Just Beige を選びました。 Prime Keyboards という 40% キーボードを中心にあつかうオンラインショップで購入しています。 Signature Plastics 製の、高い品質のキーキャップです。キースイッチは KBDfans T1 スイッチの軸とケースに Tribosys 3204 というグリスを塗布し、スプリングには Krytox 105 というオイルを塗布しています。 T1 スイッチは、ポコポコとした触感が楽しいキースイッチです。
Cocoa40 は、新しくつくったキーボードなのに、最初から手になじみます。今までつかっていたキーボードの不満を解消するためにつくったキーボードなので、意図通りといえばそうなのですが、使うたびに嬉しくなってしまいます。自分の思うようにつくり満足すること、ものをつくる楽しみってこういうことなんだなと感じるキーボードです。
追記
設計したキーボードキットについては recompile keys のサイトをご覧ください。