キーボードの世界に足を踏み入れてから約半年、ようやく自分で満足できるキーボードを組み立てることができるようになってきました。熟達(マスタリー)には時間がかかります。 KBD67 は、自分の成長を感じることができる一台になりました。
KBD67 は KBDfans から発売された 65% キーボードです。ケースはアルミニウム合金である A6063 を削り出してつくられています。オプションでプレートの材質を真鍮に変更したり、ホットスワップに変更したりすることができるので、真鍮プレート、ホットスワップのオプション両方を選びました。
ホットスワップを選んだときには、キー配列が固定となるので注意してください。 101 キーボードの 2U のバックスペースの部分が Happy Hacking Keyboard のような 1U のキーが二つになっています。また、分割スペースバーにも対応していません。
アルミニウム合金のケースは、しっかりとした重量感があり、高い精度でつくられています。ボディのグレイは青みがかったグレイであり、 MacBook Pro のスペースグレイよりも明るく、シルバーよりも暗い色調です。傾斜については明記されていなかったものの、5度ほどの傾斜がついてタイプしやすくなっています。ケースは六角穴付きボルトで固定されていますので、製品に簡単な工具は付属するものの、六角の精密ドライバーの準備をおすすめします。
プレートはボトムケースのふちに固定する、いわゆるミッドマウントのキーボードです。しっかりとした底打ち感を感じながらも、トレイマウントのようなソリッドで指先が痛くなってしまうような強い反作用は感じません。とはいえ、どこまでが真鍮プレートの効果があるのかについては比較対象がないため、はっきりとしたことは言えません。
ホットスワップであるので、組み立て自体は簡単です。PCBには電子部品が実装済みではんだも使いませんので、これも「自作」キーボードと言える範囲なのか悩んでしまうくらいです。最小限、必要な作業はケースを開け、キースイッチをはめて、キーキャップをつけるだけです。
ファームウェアは QMK です。自由にキー割り当てを行なうことができます。 Happy Hacking Keyboard のキー配列をベースに、いちばん右側のキーについては、DELTEキー、ボリュームアップ、ボリュームダウン、ミュートに割り当てています。注意すべき点として、 QMK のリポジトリにある kbd67 を書き込むと動作しなくなる点です。 KBDfans のサイトを参照して、 QMK Firmware Builder で KBD67 HOT SWAP を選択して得られるバイナリーでないとうまく動作しないようです。
キースイッチは Zeal PC の Orange Healios を選びました。静音キースイッチというメカニカルキーボード特有のカチャカチャという音が軽減されたスイッチで、キースイッチのケースと軸がぶつかって音がでる部分がゴムのような緩衝する素材になっています。キースイッチには Krytox GPL 205 Grade 0 という潤滑剤を塗布しました。
スタビライザーは Nathan Kim の動画 を参考に、いわゆる BAND-AID mod というのをしました。 BAND-AID mod は、スタビライザーと PCB との接触部分にバンドエイドを貼るというテクニックで、スタビライザーの金属的なガチャガチャ音が、ほとんどしなくなります。自作キーボードに関わるあらゆる人におすすめしたいテクニックとなっておりますので、ご承知おきください。
キーキャップは GMK Metaverse で、グループバイで購入したものです。デザインは Dead Encryption という人で、ペルソナ 5 にインスパイアされたデザインです。GMK のキーキャップには悪魔的な魅力があります。一度経験をすると GMK 以外では、満足できなくなってしまうのです。その品質管理が素晴しく、ソリッドなタッチ感、ダブルショットの印字の鮮明さ、ABS の発色、どれをとっても満足いくものになっています。
KBD67 には本当に満足しています。静音メカニカルキーボードをつくろうと決めて、自分の持てる知識と経験を注いだ結果、本当にその通りのものをつくることができました。これまでのキーボードづくりでは、ここはこうしたかった、この次はこうしようといった、どこかに課題を残すことが多かったのです。このキーボードは、そうした部分がないキーボードで、今までに無い達成感と満足感を得ることができました。