技術評論社『たのしい開発スタートアップRuby 』書評

著者より献本御礼。

この本は、コミュニティについて書かれた本である。さすがに、あの名著『Life with UNIX』と並ぶべくもないが、それでも現代日本のRuby界隈の雰囲気を書こうとした意欲がある。それだけでもこの本はユニークであるし、そこにいる著者たちのナラティブとして読む、というのも興味深いだろう。

コミュニティとは何か。コミュニティについて、一般社団法人日本Rubyの会会長である高橋征義氏が『るびま 0028 号 巻頭言』に書いた言葉を思いだす。高橋氏は次のように書いている。

コミュニティとは誰か。もちろん、あなたのことだ。あなたがコミュニティであり、それ以外にコミュニティはいない。

この言葉は、実に狷介な言葉だ。日本Rubyの会という「コミュニティ」の代表として、あなたが思うような「コミュニティ」は存在しないと宣言しているに等しい。コミュニティとは実態ではない、それは幻想であるのだと。コミュニティというモノがあって、コミュニティが何か活動するというのはウソであり、コミュニティという「活動主体は存在しない」。

また、この言葉は同時に開かれた言葉でもある。「あなたがコミュニティ」なのだから、あなたがそれを引き受ければコミュニティはそこに現前する。コミュニティとはコミットメントである。だから、コミュニティには内も外も存在しない。コミュニティとは、あなたの行動によって立ち現われてくるものなのである。

いずれにしても、『たのしい開発スタートアップRuby』という書籍は、コミュニティに対する立ち位置を考えるきっかけとなる本である。本書で紹介されていた、金髪で荒れていた青年がRubyやそれを取り巻く人々とのバトルを通じて更生していくエピソードは、涙なしには読めなかった。ぜひ書店で手にとってみてほしい。